「ショート動画が増えてきたこの時代に、長い動画なんて見てもらえるわけがない」
そんな風に思っていませんか?
YouTube の動画って最初の30秒から2分ぐらいで見るのをやめてしまう人が多いのですが、冒頭から5分以上見続けた人はその動画を長く見てくれる可能性が高いんです。
もちろんその動画の内容が良いことは大前提としてありますが、最初の数分で離脱させないことが最も重要と言えます。
長い動画のことを長尺動画と言いますが、長尺を超えた「超長尺動画」を何本も出してとんでもない再生回数を叩き出している人を1人ご紹介します。
もうお分かりかと思いますが、タイトルにも出てきている「イングリッシュおさる」さんです。
イングリッシュおさるさんの動画を再生回数の多い順に並べたものがこちらです。
なんと上から6つは、動画の長さが1時間以上のいわゆる「超長尺動画」という結果になっています。一番伸びているもので脅威の407万回再生(2024年9月12日時点)!!
さらにイングリッシュおさるさんチャンネルの中で一番長い動画は、5時間6分です。
それだけ聞くと「誰がそんな長い動画見るの?」って思うかもしれませんが、79万回も再生されています。
再生回数だけでは、視聴者がどれぐらい長くの時間その動画を見ていたかは分かりません。しかし1つ言えるのは、短い時間で離脱されていたとしたらYouTube のアルゴリズム的に再生回数はそこまで伸びないということです。
そのため今回は、イングリッシュおさるさんが超長尺動画を長く見させるために、最初の数分でどんなテクニックを使っているのかを分析しました。
長尺動画を作って再生回数を伸ばしたい人には必見の内容となっておりますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
イングリッシュおさるって何者?
もうご存じの方も多いとは思いますが、イングリッシュおさるさんがどんな人なのか簡単にまとめておきますね。
プロフィール
- 名前:イングリッシュおさる 本名は本田直久(ほんだなおひさ)
- 1995年生まれの29歳(2024年現在)
経歴
- もともと英語が苦手だったが、海外留学することなく独自の学習法で英語力を伸ばす
- 英検3級・TOEIC280点から2か月で英検1級、6か月でTOEIC900点を達成
- 公立高校で2年間英語教師を務める
- 現在:株式会社LECの代表、英語を教えるオンラインスクールを運営
YouTubeチャンネル
「英語コーチ-イングリッシュおさる」は登録者数45万人以上の人気チャンネルです。短期間で英語力を伸ばしたい人向けのコンテンツをを発信しています。
イングリッシュおさるさんは顔出しをしておらず、おさるのジョージの仮面をかぶって活動中。YouTubeでの無料コンテンツを通じて認知を拡大し、そこから有料の商品やサービスへと誘導する戦略を採用しています。
冒頭2分で視聴者を引き付ける「PATORフォーミュラ」
突然ですが PASTOR(パスター)フォーミュラって聞いたことありますか?
これは全米トップコピーライターのレイ・エドワーズ氏もセールスレターに使用しているというセールスの手法です。
PASTORフォーミュラを使うことにより、商品やサービスへの興味・関心を効果的に高めることができ売り上げにつながりやすくなります。
イングリッシュおさるさんは動画を長く見てもらうために、冒頭でこのPASTORフォーミュラを使っています。
それではPASTORフォーミュラについて簡単に解説していきます。
ステップ1 P:Person(人物) Problem(問題)Pain(痛み)
「こんなことに悩んでいませんか?」
「こんな経験ありませんか?」
といった形で視聴者の問題や悩みを言語化して明確にしていきます。
ステップ2 A:Aspiration(憧れ、共感)Amplify(増幅)
先ほど言語化した問題や悩みに共感しつつも、それを広げていくことで視聴者にとって「絶対に避けたい未来」を言語化します。視聴者に「今のままではまずい」と思ってもらうことが必要です。
ステップ3 S:Story(物語)Solution(解決策)System(システム)
ここでは自分のダメな過去や失敗談など語り、それをどのように乗り越えたのか「具体的な解決策」を示します。
ステップ4 T:Testimony(証言)Transformation(変身)
先ほどの解決策が有効である証明として、他の人がどんな変化を遂げているのか、どんな結果を得られているのかという情報を出します。
自分以外の人がやってもできる再現性のある方法だと伝えることで信頼度がアップします。
ステップ5 O:Offer(オファー)
P~Tまでで商品(サービス)への興味・関心を高めた上で、ここでようやく具体的な商品(サービス)の紹介をします。
ステップ6 R:Response(レスポンス・行動)
最後にどんな行動をとるべきかを具体的に示して後押しします。このとき「今行動しないと損をする」と思わせるのがポイントです。
この6つの順番で話をすることにより、ターゲットとなる人の商品・サービスへの興味を最大限まで高めることができます。
実際にPATORフォーミュラが使われた台本
それでは実際にイングリッシュおさるさんの動画にどのようにPASTORフォーミュラが使われているのか見ていきましょう。
今回は一番再生回数の多いこちらの動画の冒頭文を見ていきます。
動画の冒頭2分の文章をPASTORフォーミュラの型に当てはめてみると、以下のようになります(あいさつ等を除いたほぼ全文です)。
P | 皆さん が英語ができない理由は何だと思いますか? 英会話ができないからですか それともリスニングや発音ができないからですか 今 このように考えてしまった方残念ながらどれも違います。僕は今まで英会話やリスニング発音向上法を紹介してきましたが、英語学習を始めたばかりのあなたにとっ ては僕が教えたことを取り組めるどころではないというのが正直なところではない でしょうか。 そう今日指導していくのは英語学習を始めたばかり の人が一番最初に学ぶべき中学英語です。 |
→視聴者が抱えているであろう悩みを言語化しています。 | |
A | この中学英語は理解できないという問題を放置しておくと、英会話リスニング発音を鍛えても効果が全くない、それどころか皆さんの貴重な学習時間を全て無駄にしてしまうことになり ます。 |
→視聴者にとって「避けたい未来」を言語化しています。 | |
S | でも安心してください。今日の動画で中学英語を9割以上完璧に理解することが できます。中にはこの動画をきっかけに短期間で英語が上達する人が出てくるかもしれません。 僕も以前は大学1年生に英語を学習した時は中学英語すらわかりませんでした。しかしそれは5年以上も前のことです。今はもちろん全て理解し英語を第二言語として完全に習得しています。 |
→視聴者の悩みを解決するための解決策を提示しています。その裏付けとして、自分がダメな過去をどのように乗り越えてきたかのストーリーもあわせて語っています。 | |
T | 僕だけでなく指導してきたレッスン生も ・英検3級から3ヶ月で英検2級に合格 ・10年以上の英語のブランクがあるにも関わらず英検3級から2ヶ月で英検2級に合格 ・英検準2級から1ヶ月半で英検2級に合格 ・3ヶ月の学習英検初受験で英検2級に合格し、最近のもう3 ヶ月後には英検準1級に合格した主婦の方 もいます。 |
→解決策が有効である証明として、レッスン生の成果を複数提示しています。視聴者に「再現性があって信頼に値する方法だ」と思ってもらう効果が期待できます。 | |
O | これだけ今日の中学英語はあなたの英語学習の礎になります。 もしこの動画を見てるあなたが「中学英語を理解して英語学習の良いスタートを切りたい」「英会話習得や資格を習得して英語力を向上させる周りから認められたい」そう思っているのであれば 今回もかなり貴重な話をすることになります。 |
→動画の目的について簡単に説明しています。 | |
R | 今回は「中学英語の授業1億人の英文法」を主に参考にさせていただきました。ぜひ気になる方は手に取ってみてください。それでは スタートします。 |
→ここまでの段階で動画を見る価値は十分伝わっているので、あえて「動画を見てください」と直接的に訴求するのではなく「スタートします」の一言だけで行動を促しています。 |
この表を見てわかる通り、イングリッシュおさるさんは特にP・A・S・Tの部分を重点的に語っています。ここまでの段階でしっかり興味付けができていれば、わざわざ「動画を最後まで見てください」なんて言う必要ないんです。
何か商品を売る場合には「お客様にお金を払ってもらう」というハードルがあるため、Rの部分で「今買わなければならない」という緊急性をアピールします。しかし今回は無料のYouTube動画ということもあり、行動を促す訴求は弱めでも効果が出ています。
このように冒頭のわずか2分でしっかり興味付けしているからこそ、視聴者をスムーズに動画を見てもらえるよう誘導できています。
そしてその後の内容も満足度の高いものになっているので、動画を長く見てくれる人が多くなり再生回数がのびているのだと考えられます。
おまけ:PASTORフォーミュラとQUESTフォーミュラの違い
PASTORフォーミュラ以外に、相手の興味を惹きつけて行動を促すセールスライティングの型として「QUESTフォーミュラ」というものがあります。
QUESTフォーミュラの方が有名なので、ご存じの方もいるかもしれません。
QUESTフォーミュラとは以下の頭文字をとって表現される文章構成です
- Q – Qualify (興味付け)…相手の興味関心を惹きつける
- U – Understand (理解・共感)…相手の悩みに理解・共感する
- E – Educate (教育)…悩みを解決できる理論を説明(教育)する
- S – Stimulate (刺激)…悩みを解決した未来を想像させ、購買意欲を刺激する
- T – Transition (行動)…購買行動を促す
どちらも商品を売るときに使われる文章構成ではあるのですが「一体どう違うの?」と疑問に思う方もいるかと思うので、その違いを簡単にまとめてみました。
①アプローチの違い
- QUESTは相手の注意を引き、理解を深め、教育し、購買意欲を刺激して行動を促すという流れです。
- PASTORはより詳細で、問題提起から始まり、ストーリーを語り、他者の証言も含めて信頼性を高め、最後に具体的な提案と行動を促します。
②重点の置き方の違い
- QUESTは教育(Educate)に重点を置き、商品やサービスについて詳しく説明します。
- PASTORはストーリー(Story)と変革(Transformation)に重点を置き、より感情的な訴求を行います。
③使用場面の違い
両者にはこのような違いがあります。
違いを把握した上で、2つの型を効果的に使えるようになるといいですね。
QUESTフォーミュラについては以下の記事で詳しく解説していますので、興味のある方はぜひご覧ください。
まとめ:PASTORフォーミュラで視聴者の心をつかもう!
これまでお伝えしてきたように、イングリッシュおさるさんは動画の冒頭で「PASTORフォーミュラ」を使い、視聴者の興味関心を強く引きつけています。
最初に興味を持ってもらえれば、その後の内容も自然と見てもらいやすくなるからです。
逆に最初の数分で離脱されてしまっては、あなたの動画を最後まで見てもらえることは絶対にありません。
PASTORフォーミュラは、視聴者を動画の冒頭で惹きつけるための効果的な方法です。型にはめるだけで良いので、イングリッシュおさるさんのようなすごい実績を持っている人でなくても、誰でもすぐに使えます!
視聴者の心をしっかりつかむために、ぜひPASTORフォーミュラを活用してみてくださいね。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
ご質問等はこちらからお気軽にどうぞ↓